花盗人も罪になる
綾乃の家からの帰り道、紫恵は家で待っている逸樹のために、駅前のパティスリーで逸樹の好きなレアチーズケーキを買った。

紫恵はケーキの箱を大事そうに抱えて家路を急ぐ。

玄関のドアを開けると、紫恵の帰りを待ちわびた逸樹が嬉しそうに笑って出迎えた。

「おかえり、しーちゃん」

「ただいま。お土産買ってきたよ」

パティスリーの箱を見ただけで、お気に入りのケーキだと逸樹は気付く。

「やった! でもその前に……」

「うん」

逸樹は紫恵を抱きしめて優しいキスをした。

「女子会、楽しかった?」

「うん、いろいろあったの。聞いてくれる?」

「じゃあ、ケーキ食べながら?」

「そうしようか。お茶淹れるね」

他愛のない会話も、小さな喜びも、逸樹と一緒なら幸せだと紫恵は思った。

「いっくん」

紫恵はキッチンで熱い紅茶を淹れながら、逸樹を呼んだ。

「ん? 何、しーちゃん?」

お皿にケーキを取り分けていた逸樹が返事をして振り返る。

呼べば返事のある場所に愛する人がいてくれることは幸せだ。

紫恵はその幸せをかみしめながら振り返り、逸樹に微笑んだ。

「私、今日もいっくんがいてくれて幸せ」

「ん? 急にどうした?」

「そう思ったから言っただけ」

「ふーん? 俺もしーちゃんがいてくれて毎日幸せだよ」




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