花盗人も罪になる
そうなるには時間がかかった。

当たり前のように子供を産んで育てて、文句を言いながらも楽しそうに子供の話をする周りの主婦たちを、妬ましく思った時ももちろんあった。

紫恵がそんなふうに悩んでいた時、逸樹が言った。


『しーちゃんが子供のいる人たちを羨ましいって思うように、その人たちも、恋人同士みたいに夫婦の時間を過ごしてるしーちゃんを羨ましいって思ってるかも知れないよ』


人は誰でも、ないものねだりというものをするらしい。

目の前にある幸せに気付いていないわけじゃない。

自分の持っていない幸せを他人が持っていることを羨んで求めてしまう。

もし子供がいたら、きっと自分もこの人たちと同じように、子供が言うことを聞かないとか、勉強しないとか、当たり前のように文句を言うのだろう。

そんなふうに考えられるようになった紫恵は、人それぞれに幸せのかたちがあって当然だと思うようになった。

逸樹という優しい夫が誰よりも自分を愛してくれることは、紫恵にとって間違いなく幸せだ。

この先ずっと二人きりでも、共に悲しみを乗り越えた逸樹とならきっとお互いを一番に想い合って幸せに生きていけると紫恵は思う。



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