花盗人も罪になる
柊子も今は不妊治療はしていない。

体外受精などの高度な不妊治療にはお金がかかる。

それでも我が子を授かりたい一心で何度か体外受精を試みた。

そしてようやく妊娠したと喜んだのも束の間、紫恵と同じく子宮内で受精卵が育たず流産してしまった。

楜澤夫妻はこの結果に大きなショックを受け、これ以上治療を続けることは経済的にも精神的にも無理だと判断した。

不妊治療をやめた後、抜け殻のようになってしまった妻を心配した夫が、資格をいかして自宅で教室でも開いてみたらどうかと提案した。

その時柊子は、一緒に手芸教室をやらないかと紫恵に声をかけた。

二度目の流産を経験して不妊治療をあきらめたばかりだった紫恵とは、落ち着くまでそっとしておこうと少しの間連絡を取っていなかった。

柊子が思いきって連絡して手芸教室の話をすると、紫恵は二つ返事でOKした。

それから二人で開いた教室には、口コミで集まった近所の主婦たちが大勢通うようになった。

手芸をしながら他愛ない話をしたり、中には娘を連れて通う生徒もいる。

子供を作ることをあきらめた二人には、言うことを聞かない子供の文句を言ったり、子供の成長ぶりを話す生徒たちが羨ましくもあり、最近はそれを聞くのが楽しみでもある。


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