花盗人も罪になる
翌朝。

逸樹が目覚めると、体にはブランケットが掛けられていた。

目を凝らして壁時計を見ると、時間はまだ8時になる少し前。

紫恵はベランダで逸樹が持ち帰った洗濯物を干している。

いつもなら紫恵に気付かれないようにそっと近寄って、後ろから抱きしめて驚かせたりするのに、今日はとてもそんなことができる雰囲気じゃない。

逸樹はあの汚れは落ちたのだろうかと考えながら起き上がった。

少しすると洗濯物を干し終えた紫恵がリビングに戻ってきて、少しばつが悪そうな顔をして目をそらした。

「……おはよう」

明らかにいつもより元気のない紫恵の声。

「……おはよう」

逸樹もなんとなく気まずくて目をそらした。

「もうすぐののちゃんが来るけど、私はあと1時間くらいしたら出掛けるから」

「うん」

「食事は適当に済ませて」

「……わかった」

紫恵はそれだけ言うと昨日のことには触れず、よそ行きの服に着替えて出掛ける支度をし始めた。

いつもの紫恵なら温めれば食べられるように食事の支度をして出掛けるのに、やっぱりまだ怒っているのかもしれない。

そう思うと、逸樹の胸にまた夕べの苛立ちが蘇る。


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