憑代の柩
 なんと突っ込もうかと迷ったあとで、突っ込むこと自体をやめたようだった。

 彼が黙ってくれたので、しげしげと手鏡に映った自分の顔を眺める。

 そんなに美人というわけではないが、万民が好みそうな顔だ。

 正直、ほっとしていた。

 自分の顔と言われて、違和感を感じない類の顔だったからだ。

 衛の婚約者として、最初に想像していた顔だったら、自分の性格とは、ちぐはぐだったろうと思うから。

「えーと、この人が」
と鏡の中の自分を指差しながら言うと、

「佐野あづさだ。
 お前が殺した」
とすげなく衛が答える。





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