俺様上司と身代わり恋愛!?
「何度か挨拶して、少し話したくらいなんです。それなのにこんな気持ちになるのはおかしいって思うのに……志田さんから目が離せなくて。
こんな風に先輩に聞くのだって失礼だと思ったのに、どうしても気になって……すみません」
握られたままの手が熱い。
小さく震え続ける手。必死に出した声。
高橋さんの全身から志田さんへの想いが見えて……息苦しかった胸に、すーっと空気を吸い込んだ。
顔を真っ赤にして、俯いて言う高橋さんに「気にしなくていいよ」と答える。
それから。
「私も応援するね」と微笑んだ。
絶対に口外はしないと約束してから高橋さんと別れる。
約束があるからと嘘をついて私はその場にとどまり、高橋さんの後ろ姿を見送った。
そして、高橋さんの背中が小さくなってから、鞄の中からスマホを取りだす。
メールの画面を開いて、宛先に志田さんのメールアドレスを呼び出した。
初めて送るメールが……まさかドタキャンのメールになるとは思ってもみなかった。
デートの時間を相談するためにもらったアドレスなのに、と、正反対の結果になってしまったメール内容に情けなくなって笑みがこぼれる。
だけど……仕方ない。
だって直感で分かってしまったから。私の想いよりも高橋さんの想いの方が大きいって。
そもそも、私の想いは遡れば、ただ周りから人気があるからだとか、課長もいいって言ってくれたからだとか、人任せに始まったモノだ。
〝狙ってみます〟なんて、そんなひどいノリで始めた事だった。