俺様上司と身代わり恋愛!?


業務の中に、事故届の電話対応というものがある。

通帳や証書、印鑑、カードの紛失、または盗難、焼失した場合に、それらに該当する口座を一時的に凍結させるものだ。

盗んだ犯人や、拾った誰かが勝手に引き出す事を防ぐために。

もちろん、電話対応だけで済む話じゃなくて、後日、本人だと確認できる身分証を持って店頭に出向いてもらい正式な書類をもらう必要がある。

でも、まずは電話をもらった時点でストップさせる。一刻を争うことだから。

顧客によっては、いくつもの通帳を持っていたり、通帳によって印鑑を使い分けていたりするから、紛失と一言で言ってもややこしい。

どの通帳を失くしたのか、どの印鑑を失くしたのか。
それを電話の中で聞き出し、ストップをかける口座を割り出す必要がある。

私自身、新入社員だった頃はこの作業が一番苦手意識の強いものだった。
そしてそれは、どうやら高橋さんも同じようで。

「はぁ……事故届難しいです……」

そろそろ他の仕事にも慣れてきたし、と事故届の電話を受けてからの一連の流れを説明すると、高橋さんがそんな声を上げた。

時間は十一時。
八人の社員がデスクを並べる預金課に聞こえるのは、端末を叩く音と書類がこすれる紙の音。

みんなのデスクがひとつの島みたいに密集する中、ひとりだけ少し離れた小島に座る課長は、部下から回ってきた検印が必要な書類に目を通していた。

ちなみに、事故届も検印が必要な書類のひとつだ。


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