俺様上司と身代わり恋愛!?
白い柵の向こうに広がる海は濃い青色をしているけれど、決して一色ではない。
白くかすんだ部分もあれば、濃紺のような色合いをしている場所もあって……青い空の下に広がる海は穏やかな波を立て揺れていた。
空と海。
ふたつの青が延々と続いている。
思わずはーと息をつくと、それを聞いていた課長が笑う。
「海くらいでそんなに喜ぶか?」
「課長だってこっそりテンション上げてたの気付いてますよ。でも……綺麗ですね」
ぼんやりと海を眺めながら……そういえばと、さっき課長が言っていた事を思い出して、そっと口を開く。
「相手に尽くさなくたって、自分が一番だって、ただこうやって同じ景色が見られたらそれでいいんじゃないかなって思います」
『結局、自分より大事だとかそういう風に思った事はなかったから。
茅野みたいに、相手に尽くすだとか自分が我慢するだとか、そんな事は一度もしなかった気がする』
さっきそう話した時の横顔が、いつもと少しだけ違って思えたから言うと、課長はわずかに驚いた表情を浮かべた後、ふはっと笑う。
「そんなだからすぐダメな男に引っかかるんだよ。海一緒に見たらそれでいいなんて女、おまえくらいだろ」
「そんな事ないと思いますけど。……あ、ほら、高橋さんとかもきっとそう言うと思います。高橋さん、すごく純粋で素直で可愛いから」
「ベタ褒めだな。まぁ、素直でいい子だとは思うけど」
「ですよね。私、もし彼女にするなら高橋さんがいいです」と言った私に、課長が納得いかなそうに眉を寄せる。
海風がサラサラと課長の黒髪を後ろに流していた。