俺様上司と身代わり恋愛!?
……けど。
ガツンって言うって、一体どうすればいいんだろう。
今まで、周りの人100%がダメ男だと太鼓判を押してきたダメンズたち相手でも、なにひとつ意見できずに、ただほいほいと言う事を聞いていた私が、最初から牙を向きっぱなしの今野さんに意見なんてできるのだろうか。
そんな事を考えながら、週明け月曜日の仕事を終え向かった先は、駅近くにあるイタリアン。
美絵との裏合わせという名の約束があったからだ。
雰囲気のある電飾が飾る入口をくぐって中に入ると、薄暗い店内が広がる。
広々としたフロアを贅沢に使い配置されているテーブルは、隣の席との距離が普通のファミレスの倍はあるかもしれない。
照明は、全体的に光度の絞られたダウンライトと、それぞれのテーブルの上にあるランプ。
それぞれのテーブルでは静かな会話が交わされていて、なんだか美絵と私には場違いな気がするけれど……考えてみれば美絵は早乙女不動産の令嬢だ。
こういったきちんとしたレストランでご飯を食べるのなんて日常茶飯事なのかもしれない。
大学で知り合ってから今まで、リーズナブルな飲食店で何十回と一緒にご飯を食べたから、そういったお店の料理が口に合わないだとかそういう事ではないんだろう。
それに、割り勘が当たり前のようにルールになっていたから、私のお財布に合わせていてくれたのかもしれない。
〝身代わりデートしてもらったしご飯でも奢るよー〟と誘われてみれば……これだ。
いつも通り、千円ちょっとで食べられるお店を想像していた私は、店員さんが引いてくれた椅子にぎこちなく座ってから美絵にコソッと言う。