俺様上司と身代わり恋愛!?


「休みだったのに一日デートしてくれたんでしょう?」
「ううん。別に……っていうか私は課長に話聞いてもらったり奢ってもらったりで致せり尽くせりだったし。
だから、昨日も言ったけど奢ってもらう必要ないよ」

「それはいいの。だってお願いしてるのは私だしね。でもびっくりしたなー。まさかお見合い相手がゆずの上司だったなんてね」

美絵に、お見合い相手が桐崎課長だったという事を話したのは、お見合い当日の夜だ。

一応、数回会ってから性格上の不一致を理由に断るって計画になった事を知らせるためにした電話でだった。

「私もびっくりしたけど……でも、逆によかったかも。結果的に美絵のフリしなくてもよくなったし。
もしどこかの御曹司でもきちゃったらマナーとかどうしようかと思ってたもん」

本当に笑い話じゃなく心配してたんだけど、美絵はふふっと笑って「そんなの大丈夫よ」と軽く言う。

「ゆず、一緒にいてもマナーとか気になった事ないもの」
「それは友達っていうフィルター通して甘く見てくれてるからでしょ。
それよりこれ、昨日のお土産……っていうよりもアリバイみたいなものだけど」

差し出した手のひらサイズの紙袋を、美絵が受け取り開ける。

そして中に入っていたアクリルでできたカモメのキーホルダーを目の前にぶらさげて眺めた。

二等身のアヒルが持っているのは金色のサックス。
なんでも、山下公園だとかがある中区のゆるキャラらしいから、ちょうどいいと手に取ったモノだった。


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