夜の図書室で
 ナナちゃんは、僕が見せた『星の王子さま』の表紙をしげしげと見ていた。


 すると、無だった表情が少しずつ変わって、嫌悪感が浮かびあがった。


「あ、すごく嫌なこと思いだした」


 ナナちゃんの顔の左側がひきつっている。


「えっ」


 さらにまた眼の形が変わって、今度は悲しそうな表情になっていく。


「あたしは死んだのに、なんでその人は生きてるんだろうね」


 思いだしたのか。


 でも、いまにも泣きそうな顔だ。


「どうせ、忘れてるよね……。自分がやったことであたしが自殺に追いこまれた、なんて、思ってないかもね」


 泣きそうな顔のまま、ナナちゃんの口もとが笑っていた。ひどく、いびつな微笑みだった。


 今日のナナちゃんは、明るくない。わかっていたはずなのに、なにをやっているんだろう、僕は。
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