夜の図書室で
 ムッとしている。明らかに怒っているのに、なにも言ってこないのが怖い。


「……」


「笑い飛ばせよ。もう人生終ったんだから、最後ぐらい、笑って終わりにすればいいじゃん」


 自虐的でも、あざ笑うのでもなく、泣きながら笑うのもでもなく。笑い飛ばせ。死ぬ前に笑えなかった、だったら、死んだ後に笑い飛ばせ。


 ごめん。僕には、この程度の言葉しか出てこない。人と話し慣れてないんだよ。


「してみたかったな」


 また過激なことを……、と思っていたら、


「ローソンのメロンパン半分こ」


 と続いたので、僕はナナちゃんの顔を見た。


 ああ、それは、生前のナナちゃんが思い描いた、好きな人としてみたかったこと、……なのか?


「ずいぶん具体的に言うね。好きな人とこんなことしたいって妄想?」


「約束してよ。あの原稿用紙、燃やして、跡形もないようにして」


 僕に返事をせず、原稿用紙を燃やしてくれと言う。
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