にゃおん、と鳴いてみよう

ママは昔、ニンゲンに飼われてたんだけど、ある日、そのニンゲンが遠くに行かなきゃいけなくなって捨てられちゃったんだって。

『ごめんね。連れていけないんだ』

って言ってたから仕方ないのよ、って笑うけど、それってひどいと思わない?
連れていけないなら捨てていいなんて、だれが決めたのって思う。


ママの話に戻ろう。

ひとりぼっちになったママが困ってみゃーみゃー泣いていたら、親切なネコさんがこの『ゴハン屋敷』の事を教えてくれたんだって。

それでママは、ここに住みついたんだ。


生活も落ち着いて、野良ネコ生活を満喫していたママは、ある日お散歩してた時に、立派なお屋敷にいた黒ネコのパパに出会った。

柵越しに見たパパは、真っ黒で、細身で、夜の闇から抜け出してきたみたいだったらしい。
お月さまの色の瞳がとってもきれいで、初めて会ったのにやっと会えたって気がしたんだって。

それって、ひとめぼれっていうやつだよね?


ママは、その後も何度もお屋敷の周りを歩き回ったけど、パパにはなかなか会えなかったらしい。
ようやく会えた時には、なんでかパパの方が泣きそうな顔をしていたんだって。


「どうしてそんな顔してるの?」って聞いたら、パパもママにずっと会いたかったって。
ソウシソーアイってやつだったんだね。
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