未熟女でも大人になっていいですか?
『はっ?』


『はっ?じゃないったら!新品だって言ってるでしょうが!』


『そう言われましても、直ぐには持ち合わせがありません』


『今すぐ買えなんて誰も言ってないわよ!でも、なるべく早くして!』



ーーーーーーーーーー


「『剣幕に圧倒された』そうよ」


またしても父の言葉を繰り返して笑う。


朗らかさを崩さず、桜伯母さんは続けた。


「どんなコートを買い直したらいいか分からない義兄さんは、後日姉さんを誘って町へと繰り出した。今でならデートと言ってもいいのかもしれないけれど、当時はほぼ脅迫に近かったそうよ。『新しい服を買ってくれないと会社の上司に報告する!』とまで言われたそうだから」


「威勢のいい家系なのよ」と笑い転げる。

母の家系なんて知りもしない私は、その伯母の話を半ば信じられずに聞いていた。



「そこからが2人の付き合いの始まり?」


やっと落ち着いてきた伯母の様子を確かめて尋ねた。


「まさか、そんなことある筈ないでしょう?蜜姉さんはコートを買い直してさえ貰えたら満足だったんだもん。だから、誘ったのも誘われたのもその一回きりよ」


「でも、結婚してる」


「あー、それはたまたまのご縁が重なってね」


私達に向かって笑いかけ、意味深な言葉を囁く。


「たまたまのご縁って何ですか?」


聞きたいことの先を越された。

口を挟んだ高島を振り向き、伯母さんは楽しそうに微笑んだ。


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