イジワル上司に焦らされてます
 


「いやー、だってさぁ。不破くんが日下部さんを大切にしてたのは、かなり当初から僕たちは知ってたし」

「え……」

「日下部ちゃんが一人前になるまでは、良い上司でいようという不破の想いも、痛いほど俺たちはわかってたしなぁ」

「…………」

「まぁ、それには日下部さんの新人歓迎会での一言も効いてたと思いますけどね」

「私の、新人歓迎会?」

「ああ、あれな。彼氏はいるのか?って質問に、 " 付き合っていた彼とは別れてきました。だってこれからは、仕事のことを一番に考えたいし。恋人とか、今は全然考えてません " ……だっけ」



そう、始まりは、それだ。

当時はまだ、そこまでコイツを女として特別には思っていなかったものの、その時のコイツには " 男より仕事 " だということを明確に示されていた。

結果的にそのお陰で一線を引けて、良き上司であろうと思えたのも事実だし、それはそれで結果オーライだったとも言える。

俺の中では、三年。

三年もあればコイツを、いちデザイナーとして自立させてやれるとも思っていたし、関係を変えるのもそれからでも遅くないとも思っていた。

何事も " 石の上にも三年 " だというように、俺もコイツの上司として、三年間は我慢しようと決めていた。

幸い出会いもないような環境で、当の本人が出会いどころか恋愛を求めていなかったから尚更だ。

 
< 252 / 259 >

この作品をシェア

pagetop