イジワル上司に焦らされてます
* * *
「結果、7年か……」
「不破さん、怒ってます……?」
「怒ってはないな。だけど、長かったと呆れてはいる」
俺の隣に座り、不安そうに俺の顔を覗き込む蘭を、意味ありげに見つめた。
そうすれば頬を赤く染めたあと、サッと逃げるように顔を背ける仕草が堪らなく可愛いと思ってしまうあたり、俺も相当末期だ。
「す、すみませんでした……今更ですけど」
「ホントに今更だし、別にもうどうでもいい。結果、今もお前が隣にいるなら考える必要もないことだしな」
「…………っ、」
「……お前さぁ、そういう可愛い顔するの、ホントやめろよ。特に、俺以外の男の前で」
深夜1時半。
仕事終わりの金曜日は一緒にオフィスを出て、そのまま二人で俺の家に帰るのがお決まりになったのは、蘭と結婚を決めてから直ぐだった。
関係が変わる以前、お互い仕事場でも一緒なのに帰りの電車まで一緒だというのは、蘭が息が詰まるだろうから止めていたのに。
それを彼女に言えば、彼女は驚いたように言ったんだ。
『私も、同じことを思ってました。ずっと一緒にいるのは、不破さんが息が詰まるだろうなって』
7年一緒にいても、わからないことだってある。
俺が踏み出すまで、俺たちの関係が変わらなかったように。
どんなに分かり合っていると思っていても、時には言葉にして伝えなければいけないこともあるのだ。