イジワル上司に焦らされてます
ぽつり、と。
不意打ち気味に呟けば、マキはビールを飲もうとしていた手を一瞬止めて、「まぁ、それもそっかー」と、曖昧に笑った。
そもそも、マキとこうして久しぶりに会うことになったのも、マキが3年程付き合っていた彼と結婚することになったからだ。
それを3日前に電話で報告されて、「お祝い」と称して飲みに行こうという話になって今に至る。
それなのに、いつの間にか話の中心が私のことになっていた。
本当なら最初からマキの話を聞くべきだったのに、どうして私の話一辺倒になっていたんだろう。
「……結婚しても、デザイナーは続けるの?」
「無理だろうね」
だけど、その理由はすぐにわかってしまった。
私が声を潜めて投げた質問へ、呆気無く返された予想通りの返事こそが、マキが進んで自分から話を始めなかった理由だ。