エリート上司と偽りの恋
「お刺身めっちゃ美味しー」

「でしょ?男の人が好きそうなメニュー多いし、デートで来てみたら?」

「やだーそれって主任とってことですか?どーしよー」

桐原さんが私の肩をバチンと思い切り叩いた。

痛いし、そういう意味じゃなかったんだけどね……。


「っていうか、主任て彼女いるんですかね?」

「さぁ、でもあれだけの容姿だったらいるんじゃない?」

そうだよ、桐原さんいいこと言った!私なんで今まで気づかなかったんだろう。

仕事もできて容姿端麗な篠宮主任なら、絶対綺麗な彼女がいるに決まってる。

そう思った途端、急に気持ちが軽くなった。


「えー、そうですかね?聞いてみちゃおうかな」

「やめなよ、どうみても仕事の話をしてる雰囲気だし」

私がそう助言すると、桐原さんはグイッと身を乗り出して深呼吸した。

「私、気になることは聞かなきゃ気がすまいタイプなんです。それに今は仕事中じゃないんですから」


え……ちょっと、まさかこの距離から聞く気?結構な声の大きさが必要になるけど?


「篠宮主任!」

私の不安をよそに、思った以上の声で主任を呼んだ。

でも、主任は振り返らない。


「しゅーにーん!聞きたいことがあるんですけどー」

桐原さん……あなたのその強いハートを少し分けて下さい。


部長に促されたのか、主任がゆっくりと振り返り、それと同時に私はうつむく。


「なに?」

声だけで分かる。今の主任、絶対冷たい表情をしてるよ……。


「主任って彼女いるのかなー?……って、〝加藤さん〟が言ってましたよ」


はぁ!!?

ちょ、ちょっとまってよ!なんで私!?

口をパクパクさせながら桐原さんの太ももを軽く叩いた。

違う違う!私じゃない!

でも驚きすぎて、声がでない。


すると、一瞬私を見たと思ったら、すぐに主任の視線は桐原さんに移った。


「こんなところで発表することじゃないでしょ。そもそも関係ないし」

そう答えた主任の表情は、具現化するなら鋭く尖ったツララだ。

そのツララが、私の胸に突き刺さる。



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