エリート上司と偽りの恋

翌日東京営業所では、全員出勤したところで改めて篠宮さんが挨拶をしている。


「福岡に戻ってきたと思ったら今度は東京に異動ということでバタバタしてしまいましたが、主任として現在売上二位の東京営業所を年内に一位にします。その為に多少厳しくすることもあるかと思いますが、宜しくお願いします」


イケてるパンダ……すごい自信だ。

桐原さんが言ってた通り、みんなの前で挨拶をしている篠宮さんの目は鋭い。


挨拶を終えた篠宮主任は予定を書き込むホワイトボードに帰社時間を十五時と記入し、営業の数名を引き連れて早速外出した。


「主任二十九歳ですって、しかも独身。丁度いいんですけど」

なにが丁度いいのか分からないけど、空になった主任の席をウットリとした表情で見つめながら桐原さんが呟いた。

「ほら桐原さん、今日の分のオーダーメール届いてるかチェックして。午前中に伝票作成するよ」

「はーい」

返事は短く「はい」って教わらなかったかな?初めてできた後輩だけど、桐原さんは色んな意味でなかなか手強い……。


気を取り直して、朝代理店からオーダーを受けた分の受注伝票をパソコンで入力し始めた。


東京営業所は六階建ての自社ビルで最上階は社長室、五階は倉庫や資料室、四階には会議室などがあり、三階は営業部、二階は営業推進部で、一階が管理部と受付になっている。

営業事務の所属は営業部だから三階。同じフロアだから、嫌でも篠宮さんと会うことになるっていうのが辛い。

さっきの篠宮さんを見て思ったのは、やっぱりイケてるパンダだと思い込むっていうのは無理があるな……。


そんなことを考えながら仕事をしていると電話が鳴り、私はワンコールで受話器を取った。

電話でオーダーを受けることもあるので、恐らく代理店からだろう。



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