恋した彼は白金狼《プラチナウルフ》
私は先輩の前に回り込むとペタンと床に座り、画を拾い上げる彼の手をキュッと掴んだ。

精悍な頬がゆっくりと傾き、漆黒の瞳が私を見る。

いつもは冷たい切れ長の眼が、今は苦し気だ。

私はポツンと呟くように言った。

「なんでそんな顔するのよ。いつもみたいに冷たくしてたらいいじゃん」

先輩は私を見つめたまま、何も言わない。

その瞳を見ているうちに、私はあの日……あの犬神様の祠で、プラチナ色の狼になった先輩の姿を思い返した。

そして、出逢ってからの出来事が、映画のように脳裏に浮かぶ。

あなたが……学校一のモテ男が、狼だったなんて、本当に驚いたよ。

カッコ良くてスタイルも良くて、私の人生に無縁だと思っていた人と、こんな風に関わる事になるなんて。
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