恋した彼は白金狼《プラチナウルフ》
涙声で小さく呟くと、愛華先輩は身を翻して駆け出していってしまった。

予鈴が鳴り始めたせいで周りの生徒は教室へと消えていき、 後には私と雪野翔が残った。

「……あんな言い方、ない」

悲しそうに眉を寄せた愛華先輩が可哀想で、気がついたら私は思わず呟いていた。

「あー?」

雪野翔がグッと私を睨んだ。

ひえっ!

切れ長の瞳が苛立たしげに瞬いて、私を凝視している。

こ、怖い。

けど、何度かの接触を経て少しだけ免疫力がついたのか、私の心がここで引き下がるのを拒否していた。

震えそうになる両の拳を握り締めて、私は雪野翔を見上げた。
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