御曹司による贅沢な溺愛~純真秘書の正しい可愛がり方~
そもそも自分と雪成の関係は“恋人に振られて傷ついた美月を慰める”というかたちで始まったのだ。
“冗談じゃない、からかっていない”と雪成は繰り返し、美月をここに住まわせることにしたが、それは雪成にとって、かわいそうな捨て猫を保護することと一緒なのだ。
(菜穂さん、言ってた……損をしても、放っておけない人なんだって……。私のこともそうなの?)
彼を好きだという気持ちと、迷惑をかけたくないという気持ちの間で、美月は振り子のように揺れる。
結局、雪成に背を向けたまま、静かに泣くことしかできなかった。
それから雪成とは完全にすれ違いの生活が続いた。
雪成は朝早くに家を出て、深夜を回って帰宅してくる。ほとんど会話がない状態だ。
だから美月は仕事になるべく没頭して、雪成のことを考える時間を減らそうとしたのだが、ふと手が止まった瞬間に、どうしても考えてしまう。
「はぁ……」
何度目のため息だろう。
ため息をつくと幸せが逃げるというが、自分の幸せなど、とうに尽きた気がする美月である。