御曹司による贅沢な溺愛~純真秘書の正しい可愛がり方~

 この道十年の秘書室長であり、同時に美月にとって一番頼れる先輩である。


「寺前さん、どうしたんですか?」
『実は社長のおつかいで外出してたんだけど、事故で電車が遅れてるの。しかもうちの子が熱出したらしくって、今から保育園に迎えに行かなくちゃいけないのよ。私の代わりに懇親会に出てくれないかしら』
「わかりました」


 美月はパソコンから秘書室共用のスケジュールを呼び出して、寺田と電話で内容を確認する。


 懇親会と言っても、日本橋に本社を置く老舗企業の社長たちが集まる、親睦を深めるという名目で開かれる、ただの飲み会である。

 寺前でないといけないわけでもない。自分で十分務まるだろう。

 
『残業つけて、そのまま直帰にしてくれる? 急にごめんなさいね〜』
「いえ、大丈夫です。お子さん、ひどくならないといいですね」


 電話を切ってから、美月は慌ただしく化粧をなおし、社長室へと向かった。



< 179 / 323 >

この作品をシェア

pagetop