御曹司による贅沢な溺愛~純真秘書の正しい可愛がり方~
ベッドから起き上がり、クローゼットに押し込んでいた小さなポーチを取り出して、中身をひっくり返した。
滉一に振られたあと不眠が続き、しのぶに無理やり連れて行かれた病院で処方された眠剤である。
仕事に支障が出るほど強い薬ではないが、しばらく飲んでいなかったのでよく効きそうだ。
規定の量を飲み目を閉じる。目の端から涙がこぼれ落ちたが、そのまま枕に顔を押し付けた。
(もう、何も考えたくない……。)
翌朝、起きる時間よりも早く、スマホの着信音で目が覚めた。ベッドの下のバッグからスマホを取り出すと、母からだった。
「はい、もしもし……?」
(こんな早くなんだろう……。)
体を起こしベッドの上に座りなおす。口を開くと、喉の奥から不快な眠剤の苦味がこみ上げてきたが、なんとか飲み込んだ。