常務の秘密が知りたくて…
雨が降っているときは稽古もつけるのが難しいのに、その近くの屋根のある回廊で会うのがいつの間にか恒例になっていた。そのときにするのは剣の稽古ではなくただの雑談だ。律儀にも俺はそこに足を運んだ。
「もうすぐサラ王女も二十歳か」
「お前もだろ」
「私はまだ一年あるもの」
俺にとってはどちらもたいして変わらない気はするのだが。
「緊張状態が続く国々から縁談の話もあるみたいだけど、国王たちは出来ればサラ王女の意志を尊重させてあげたいみたい」
「難しいだろうな」
ここは王の力量が問われるところだ。娘の気持ちを優先して民を危険にさらすような人ではない。そして俺が知っている限り、王女も王家の後継者としての覚悟も誇りも持っているように思う。
「この前も隣国の王家の関係者たちが王女に謁見に来ていたし」
エリスはため息をつきながら遠くを見ていた。雨のせいか少し肌寒い。人通りのない回廊は、まるで自分たちと世界を隔離しているように思えた。
「謁見するときにね、大抵の人はサラ王女の前に膝をついて、その手の甲に口付けるでしょ?」
急にわざとらしく明るい声を出してエリスが俺の方を向いた。
「それを見る度にいつもカイルが騎士団の隊長に就任したときのことを思い出すの。……すごく綺麗だったなって」
隊長に就任する際は、形だけとはいえ国王から拝命することになっている。その際に王女にもお決まりの挨拶をした。しかし実際は手の甲に口を近付けはするが口付けたりはしない。
「側で見てたんだけど、ゆっくりとサラ王女の前でひざまずくカイルが目に焼き付いてて。色々な人が同じ事を王女にしてきたけど貴方はどこか特別だった」
「俺はもう忘れた」
「そうかもしれない、でも私は覚えてるの。不思議ね、あのときはあんなに遠かったカイルが今はこうして隣にいるんだから」
そう言われて俺は記憶の片隅にあったものを掘り起こす。王女の無垢な真っ白な手をとったこと、この前の交渉に向かった村での娘の手を。
「カイル?」
「もうすぐサラ王女も二十歳か」
「お前もだろ」
「私はまだ一年あるもの」
俺にとってはどちらもたいして変わらない気はするのだが。
「緊張状態が続く国々から縁談の話もあるみたいだけど、国王たちは出来ればサラ王女の意志を尊重させてあげたいみたい」
「難しいだろうな」
ここは王の力量が問われるところだ。娘の気持ちを優先して民を危険にさらすような人ではない。そして俺が知っている限り、王女も王家の後継者としての覚悟も誇りも持っているように思う。
「この前も隣国の王家の関係者たちが王女に謁見に来ていたし」
エリスはため息をつきながら遠くを見ていた。雨のせいか少し肌寒い。人通りのない回廊は、まるで自分たちと世界を隔離しているように思えた。
「謁見するときにね、大抵の人はサラ王女の前に膝をついて、その手の甲に口付けるでしょ?」
急にわざとらしく明るい声を出してエリスが俺の方を向いた。
「それを見る度にいつもカイルが騎士団の隊長に就任したときのことを思い出すの。……すごく綺麗だったなって」
隊長に就任する際は、形だけとはいえ国王から拝命することになっている。その際に王女にもお決まりの挨拶をした。しかし実際は手の甲に口を近付けはするが口付けたりはしない。
「側で見てたんだけど、ゆっくりとサラ王女の前でひざまずくカイルが目に焼き付いてて。色々な人が同じ事を王女にしてきたけど貴方はどこか特別だった」
「俺はもう忘れた」
「そうかもしれない、でも私は覚えてるの。不思議ね、あのときはあんなに遠かったカイルが今はこうして隣にいるんだから」
そう言われて俺は記憶の片隅にあったものを掘り起こす。王女の無垢な真っ白な手をとったこと、この前の交渉に向かった村での娘の手を。
「カイル?」