常務の秘密が知りたくて…
 王女の二十歳の誕生日が近付くにつれて近隣諸国との緊張状態は一気に高まっていった。うちと関係を結びたいもの、それを阻止しようとするもの、さらには国の乗っ取りを狙うものなど、誰が味方で誰が敵なのかわからなくなってくる。

 だからか、エリスと会うことはなかなか叶わなかった。向こうも極力、王女の側にいるのだろう。それが本来の仕事だ。

 また明日から国境付近での戦に駆り出される。束の間の休息を自室でとろうとしたとき、部屋に扉を叩く音が響いた。

「どうした?」

 扉に向かって叫ぶが返事はない。緊急の召集でもないようだ。なら、こんな夜更けに誰が? 扉に近付くが殺気を感じるわけでもなく、気配を消しているわけでもない。そっと扉を開けると、そこには意外な人物が立っていた。

「ごめんなさい、こんな時間に」

 そこには人目を憚るようにして頭から布を被ったエリスの姿があった。

「何かあったのか?」

「どうしてもカイルに話したいことがあって」

 言いたいことは山ほどある。こんな時間に男の部屋に訪れるなんて何を考えているんだ。王女の近しい者が、こんなところを訪れるのを誰かに見られたら。

 でもそのどれもを言葉に出すことはなく、エリスを部屋に招き入れる。隠すための布を外したエリスはどことなく疲れている表情だった。

「話ってなんだ?」

 単刀直入に告げた俺の言葉にエリスの肩が震えた。

「遠征前にごめんなさい。でも、時間がなくて」

「時間?」

 なかなか本題に入ろうとしないエリスにどうしても苛立ちが声に表れる。エリスは顔を歪めながらその口をゆっくりと開いた。
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