常務の秘密が知りたくて…
「ほんまに?」

 一方的に自分の気持ちを吐き出していると返ってきたのはあっけらかんとした声だった。

「長丘の望みってなんなん? ほんまに叶えられへんの?」

 その言葉に俺は息を呑む。

「俺は――」

「長丘が何を言っても、思ったとしても絵里ちゃんは絵里ちゃんやろ? そんな簡単に変わらへんて。ましてや絵里ちゃんの気持ちが分かるんは絵里ちゃんだけや。絵里ちゃんが自分の思い通りにならんからって失望するのは随分と勝手ちゃう?」

 失望しているわけじゃない、と言い返そうとしたが坂本はそれを許さずに先を続けた。

「相手の意志ばかり尊重して、そんなん逃げやろ? お前自身はどないしたいんや?」

 珍しく強い口調で指摘され目を瞠った。俺が本当に望んだことはなんだ? 俺はどうしたいんだ?

『自分が幸せにじゃない人に、相手を幸せになんて出来ませんよ』

 時計を確認すると彼女が出て行ってから既に十五分は経っている。

「悪い、とりあえず電話を切るぞ」

「あ、その前にあと一つ。どうせ絵里ちゃんから取引の話も聞いてないんやろ?」

「取引だと?」

 坂本の発言に俺は受話器を握り締めなおした。

 俺はあのときも今も坂本が言うように逃げたんだ。あのときは俺も彼女も背負うものが大きすぎてどうしようもなかった。でも今は違う。俺はまだ彼女と何も話していない、何も伝えていない。
< 89 / 100 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop