常務の秘密が知りたくて…
 タクシーに乗り込み堀田の会社の名前を告げながらも俺は苛立ちが隠せなかった。不機嫌さが滲み出ていたのか運転手も余計なことは言わない。焦る気持ちを抑えながら先程の坂本から聞いた話を思い出す。

『絵里ちゃん、堀田から取引を持ちかけられたらしいわ。お前んとこで頓挫している医療器具のことで自分とこに来るんやったら圧力をかけるのはやめたるってな』
 
 そんなやりとりがあったなんて俺は驚きが隠せなかった。

『堀田の奴、そこまでしてあいつが欲しいのか?』

『んなわけないやろ。お前が相変わらずやから手の込んだ嫌がらせや』

 昔から一方的に目の敵にされて色々と嫌がらせをされてきたが、堀田の俺に対する執着は相当なものらしい。それにしたって

『どうしてあいつはそのことを俺に言わなかったんだ?』

 何気ない問いかけに対して、電話口からわざとらしいため息が返ってきた。

『それ本気で訊いてんの?』

 みなまで聞くなというのがありありと伝わってきて自分の質問がいかに愚かなものなのか気付いた。どうして言わなかったのかなんて決まっている。彼女はいつも自分のことよりも人のことばかりだ。だから――
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