常務の秘密が知りたくて…
 例の医療器具の件は急展開を迎えた。堀田さんが病院側への圧力を止めたのか、病院から謝罪があり今後も製品化に向けて開発を続けることになった。

 どういう風の吹き回しなのか、詳しくは話してくれなかったが常務と堀田さんの間でやりとりがあったらしい。おかげでようやく慌ただしかった日々も落ち着いたのだ。

「あの、常務」

「なんだ?」

 唇を重ねられてから、今更とは思うがこんなに近くで顔を見られることが恥ずかしくて顔を背けがちに質問する。

「私のせいであまり寝ていらっしゃらないんじゃないですか?」

 常務は女性の寝顔が苦手なのに大丈夫なんだろうか。私が目を覚ましたときも、既に起きていたみたいだし。

「ああ、あまり寝ていない」

 さらっと肯定されて私は唖然とした。背けていた顔を常務の方に向き直らせる。

「だから泊まるのは反対だったんです。寝るだけなら別々にしてもよかったのに」

「なんだ、寝るだけなのは不満だったのか?」

 意地悪い笑みを浮かべた常務の言葉を慌てて訂正する。

「そ、そういう意味じゃなくてですね」

 今回の常務の家に泊まったのはあのアパートだと心配が尽きないとかそんな理由で強引に連れてこられてしまったのだ。理由は何であれ、家に泊まるというのがどういう意味なのか私だって分かっている。しかも相手はあの常務だし。

 色々と緊張してやって来たわけだが、むしろ苦手だという「一緒に寝る」ということを求められて拍子抜けした。そして常務の意図がわからないまま、こうして同じベッドで眠ってしまったのだ。正確には眠ったのは私だけのようだが。
< 97 / 100 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop