リーダー・ウォーク
外堀を埋めてGO!

 こうもすんなり問題なく関係が行く事が納得いかないってどういう事。
よく職場の先輩たちから聞いていた彼氏の愚痴、惚気、結婚するかしないか
そんな話題自分にも降り掛かっているというのに。

 自室へ戻りベッドに寝転び母親にメールして目を閉じる。
お店から遠いからって送ってくれる。最寄り駅でいいって言ったのに
 たぶん店の直ぐ側まで送ってくれるんだろうな。

 もうそろそろ信じてどっぷり甘えてイチャイチャしてもいいのでは。
 可愛げない女は嫌われる。



「おはようございます」
「おはようございます。散歩ですか」
「はい。彼女は朝決まった時間に起こしに来るので」

 目がさめて自分の部屋じゃないことに変なドキドキを覚えつつ。
廊下に出たら次男さん、と白い子猫。自由にあれこれあるき回るけど
絶対に目の届かない所へは行かないで時折振り返って
 飼い主さんの存在を確認する甘えん坊なモチ。

「へえ。……はっ」

 にへえと笑ってそんな様子を見ていたけど。

「なにか」
「の、の、のーめいくっ」

 黙っていればいいのに素直に返事してしまう。
 ノーメイクと言っても普段から薄化粧で代わり映えはしない。

「気にしないので。どうぞ洗面台はあっちです」
「すみません変な声だしちゃって。モチちゃん驚かせてごめん」
「よくチワ丸と騒いでいるのでこれくらい大丈夫ですよ」
「……そういえばチワちゃんも朝はお散歩してるって」
「彼はあっち」

 指さした先には広い公園かと思うくらいの敷地のお庭。
 立派な木と池と花と、まあとにかく広い空間。

 そこに眠そうな顔の三男さんと元気いっぱいのチワ丸。
 こちらには気付いてないようなので先に洗面所へ行った。

 松宮家の朝は早い。


「おはようございます」
「おはよ」

 身なりを整えてから庭へ向かうとちょうどウンチ回収中の彼。
 チワ丸はこちらの顔を見て大はしゃぎ。でもすぐ捕まってお尻を拭かれた。

「今日も元気いっぱいだね」
「稟が居るからな。知らない女だと怖がって引っ込む」
「崇央さんとは女性の趣味とは合わないんでしょう」
「合ったのは唯一稟だけだな。チワ丸。お前がどんなメスを選ぶか興味津々だ」
「朝ごはん私だけ食べるのは恥ずかしいから一緒に来てくれますよね」
「ああ。いいよ。好きなだけ食べて」
「ここに居ると太りそう」
「チワ丸と遊んでりゃすぐ痩せる」

 散歩を終えて朝食の時間。それぞれお忙しいようで兄たちは居なかった。
いつもの事だからと特に気にする様子はなく二人で頂く。
 チワ丸は少し離れた専用の場所でモリモリと食事中。


「終わり次第連絡しますから。駅まで一緒に父を迎えに行くということで」
「わかった」
「もしお仕事で無理な場合は二人でご飯食べて観光してますから」
「そんなの印象悪いだろ。ただでさえイメージ良くないだろうから。
何とかする。社長に掛け合っても良い。…安心して」
「分かりました。じゃあ、楽しみにしてます」
「俺も」
「何があろうとも職場の駐車場でイチャイチャはしません」
「めちゃくちゃ見てくるぞあのババア」
「さあ今日も頑張ろう」

 彼氏に職場まで送ってもらうってもっと素敵なものを想像したが。
実際やってもらうと周囲が気になって恥ずかしくてちょっと無理かも。
 どうしてもって言われたら近所のコンビニでおろしてもらおう。

 目立つ車、目立つ容姿の男、ああもう噂になってるかも。



「崇央。今日の会議は参加しなくていい」
「いきなり話しかけてくるから何かと思った。いいの?
結構重要な会議だと思うけど」
「代わりに僕が参加する。お前は忙しいだろう」
「何の真似だ。俺に恩を売っておいて陥れるとか?」
「無理に参加した所で身が入らないだろう。
集中力を欠いた状態で人前に出てほしくないだけだ」
「松宮家の人間としてふさわしくはない、か。そうかもな」
「代わりにもちを見て欲しい。管理メモを彼女に渡してある」
「いつの間に稟にそんなもの」
「頼むぞ崇央」
「分かったよ。そんな睨むな」
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