リーダー・ウォーク
最初はおとなしかった次男さんもだんだんと険悪になって最終的には
バチバチと睨み合いの嫌味の言い合いになってどんどん空気が悪くなる。
稟はどうしようもなく置いて行かれている状態で、食事の味もよくわからない。
「ごめんね、稟ちゃん。…君が来てくれたら久しぶりに兄弟で食事が出来るかも
しれないと期待していたのだけど。やはり、難しいみたいだ」
もう何を食べたいという気にもなれず出来たら逃げ出したくてどうしようかモゾモゾと
していたら上総に目配せされて、さりげなくその場を出た。
ドアを開けて廊下に出て、深呼吸。続いて上総も廊下に出てきた。
「兄弟って難しいんですね」
「いい歳をして恥ずかしい限りだよ。…少しだけ、話がしたい。良いかな?」
「え?ええ。はい」
上総に言われるまま、彼に付いて行って庭へ出る。池があり橋があり、
立派な木があり。花があり。石灯籠やらししおどし。時代劇に出てきそうな
お屋敷の庭園。こんなに広いのに手入れが行き届いているのだから凄い。
「来てもらったのはさっきも言ったように兄弟そろって食事がしたかったのと、
君にお願いがあってきたんだ」
「お願いですか」
「崇央は君を信頼している。そんな君の言うことなら聞くだろうから」
「犬のこと限定ですよ?ほかは全然で」
「僕は崇央に後継者として立って欲しいと思っているんだ」
「…え?」
後継者?というのは、社長?それとも当主というもの?
「絶対嫌がるだろうから諦めていたんだけどね。どうも風向きが変わってきたから。
君に協力してもらって、崇央をその気にさせて。社長を継いで欲しいんだ」
「でも上総さんは?」
「あー。僕は元からそこまで出世欲はなくて。長男だからやっているだけで。
本当は喫茶店とかのんびりやりたいんだ」
「……は。はあ!?」
確かに上総なら見た目も温和で素敵な人だしオーナーとか向いてそう。
だけど、なぜそんな重大な話を私にしますか?
私がやれって言ったってたぶんあの人はそんな面倒はしないと思いますが?
「ドッグカフェとかいいよね?」
「そ、それはいいと思いますけど。あの、次男さんは?凄くやるきまんまんじゃないですか」
「彼は頂点には興味がないんだ。あくまで補佐であることに誇りを持っているから。
と、言われてしまったんだよね。前にお願いしたら」
「もうお願いしてた!……な、なるほど。それで、崇央さんに」
「一緒に頑張ってくれないかな。君が居れば心強い」
「ええっ。……あ。あの。…私は、別に何でもないですし。チワ丸ちゃんの世話係で」
「そこをなんとか。ね。お願いだよ稟ちゃん。僕を助けると思って、ね?」
「えええ」
どうしよう、絶対無理だって。でも、頭を下げられると断りづらい。
結局「出来る範囲でなんとかする」という返事をしてしまう。
「そこに居たのか」
「あ」
そろそろ戻ろうと廊下を歩いているとちょうどドアを開けて廊下に出てきた彼。
「何してた?上の奴も居なかったよな?」