リーダー・ウォーク

私のトリマー人生と、人間関係の崩壊を盾に強引に脅され
それでも彼なりに一生懸命に告白をしてもらって。
とりあえず?松宮崇央さんと交際することになったようです。

豪邸訪問から数日後。

私は今、愛玩動物飼育管理士の資格を取るべく勉強中。

「……おい稟」
「ご飯ならさっき食べたでしょー」
「飯の話じゃない」
「トイレは廊下を真っすぐ行って左」
「トイレでもない」

小さいテーブルに過去問と教材を広げ勉強一直線の稟。
その後ろで不満そうに座っている松宮。
彼女は声をかけても適当な返事をするだけで振り返りもしない。

「チワ丸ちゃんのお腹に赤いぽっつりがあったんですけど何かなあ」
「マジか!おい!チワ丸!腹を見せろ!腹を!……って、乳首じゃねえか!」
「可愛いですよね」
「男の乳首なんか何処が可愛いんだよ変態かあんた」
「……」
「拗ねるなよ」

試験がもう来週末にはあるから勉強が忙しいから会うのは無理と言ったのに。
強引にチワ丸を連れて押しかけてきて。でも乱暴に襲いかかったりはしない。
延々と稟にかまえと視線と言葉を投げかけるだけ。
チワ丸はのんびり玩具で遊んだり松宮の膝に寝ていたりすっかり別荘を満喫中。

「あ。そうだ」
「何だよ」
「明日飲み会に行くんです。だから何かあってもチワ丸ちゃんを預かれませんからね」
「飲み会?仕事場の?」
「はい」
「明日は何もないからいいけどさ。というかあんた言うの遅くないか」

時間はもう11時を過ぎたあたり。松宮が部屋に来て4時間経過。

「忙しかったんです」
「……で?飲み会は仕事場の連中だけ?」
「はい。あ。でも、先輩が他にも人を呼んでるっぽいけど…なんてったっけか」
「そういうのってさ。どうせ二次会とかあって、合コンぽくなってくんだろ」
「ああ。そうそう、何かイケメンが来るそうですよ」
「あっそう。イケメン。…で?それが嬉しいなら俺は全力であんたをここから出さないが?」
「まさか。先輩が言うにはそこのお店、取り揃えてるお酒が豊富なんだそうです!」

呆れた顔をする松宮だが稟はお酒のことを考えているのか嬉しそう。

「本当なら許さないって言う所だが。…そんな楽しみなら、止めても無駄だろうな」

後ろからそっと稟を抱きしめて頬に軽いキスをしながら問いかける。

「無駄です」
「……そうか。なら、飲み過ぎない程度に楽しんできたらいいさ」
「はい」
「連絡貰ったら迎えに行くから。よくわからん男に酔っ払った所お持ち帰りとかあんたも嫌だろ」
「ありがとうございます」
「別に。あ、なあ、酒乱とかじゃないよな?意味もなく殴られるのは嫌だぞ」
「今まで言われたことないから大丈夫ですよ。むしろ普通すぎて酔っ払ってるの気付かなかったって」
「顔に出ないタイプか。……もう遅いし寝ないか。チワ丸も眠くてもうベッド行った」
「そうですね。あー布団敷くのめんどくさい。私もベッド買おうかな。あ。ねね、崇央さん」
「あんたに文明の利器を与えるとサルまで退化しそうで恐ろしい」
「じゃあ崇央さんはチワ丸ちゃんと寝てくださいね。私はサルっぽく布団に包まって寝るから」
「馬鹿ちゃんと敷布団を敷け。犬だって布団で寝てるんだぞ。いい加減にしろ」
「チワ丸ちゃんはセレブなだけ」

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