リーダー・ウォーク
割り勘だしあまり自分だけが酒をガバガバ飲むのは悪いだろうと
乾杯の酎ハイを1杯。焼酎のお湯割りを梅入で3杯まで我慢した。
それでも周囲は「凄い飲むなこの人」という顔をしていたけれど。
二次会に何度も誘われたがなんとか断ってお店を出た。
ちょっと足元がふらっとする気がするがこれくらいなら大丈夫。
なにせ帰りは彼氏様がお迎えに来てくださるのだから。チワワを連れて。
目がしょぼしょぼするので崇央に電話したら留守電に繋がったので留守電に入れる。
そんな稟の前に見覚えある人が。確認も込めてふらつきながらも近づく。
「やっぱり恭次さんですよね?」
「……だったらどうだっていうんですか」
松宮家の次男。何時も怖そうな顔と態度で稟とも視線を合わせようとしない。
普段なら近づかない方がいいと思うのに、酒のせいかグイグイ近づく。
相手は不機嫌そうに視線をそらすけれど。
「おひとりですか?」
「関係ないでしょう。酒臭い」
「すいません。お酒飲んでました」
「そんな事は分かりきっていますから。…崇央とデートの途中なんでしょう?
さっさと戻ったほうが良い、俺と居るとあいつは怒りますよ。無駄にギャンギャンと」
「それはそうですけど。今までお仕事場の人と飲んでました」
「……」
無視の構え。でもその場から離れないのは約束でもあるのだろうか。
彼が見ていた先にあるのは、ペットサロン。稟の店と違う高級なお店だ。
「あ。ここってすっごい評判いいけど高いんですよねー」
「……」
「泥のパックとかアロマとかマッサージとか毛染めなんかもできるそうです」
「あんな短い毛を染色したら可哀想だ」
「まあ、チワ丸ちゃんはスムチですからね」
「…す、…すむち」
「スムースチワワ。毛の短いこです」
「……ああ」
犬には興味が無さそうだったけれど、もしかして本当はあるのかな?
「可愛いですよね。あ。あのプードルアフロだ。すごいなー」
「貴方はあんなふうに出来るんですか」
「まだ先輩のカットチェックが必要なので、胸を張って出来るとは言いづらいです」
「……なるほど。まだ新人だと言っていましたか」
聞いてみたいような、でも怒られるような。でも相手は最初ほど嫌そうな顔はしてない。
「そうなんです。ベテランに見えるかもしれないですけど、ただ歳とってるだけの新人です」
「自虐することはないでしょう。人生はまだ長い。今新人だというだけで、貴方もプロになる」
「……」
「な、なんですか。人の顔をじろじろみて」
「いえ。…優しいなって思って」
「は?」
もっとこう罵倒されるのかと思っていた。最初の出会いがまずマイナスだったから。
まさかそんな風に言われるとは思わなくて、びっくり。
「ちょっと…いえ。かなり嬉しかったです」
「そうですか。……それはそうと、行かなくて良いんですか?」
「え?何処へ?」
「そこに崇央が鬼のような顔をして貴方を睨んでいますよ」
「いつの間に!?」
振り返ると腕をくんでこっちを見つめている怖いお兄さんが。
「崇央は何もわかっていないただのガキだ。それでも良いなんてよほど金に困っている
のかと思ったが、…ただの変人だったようですね」
「あれ?今度はひどい事言われてる??」
「さあどうでしょうね。そんなことより、さっさと行ったほうがいいんじゃないですか」
「あ。そうですね。あの、よかったらお店に来てください。わんちゃんイッパイいますから」
「……、…考えておきましょう」