俺様社長の恋の罠

「遅い」


電話と同じ言葉を吐いて、九条社長はふっと微笑む。


「今日は泣いてないの?」


そう言われてさっきまで泣きそうになってたのを思い出しぐっと言葉に詰まる。


どうしてこの人には、分かってしまうのか。


そんな私を見て何かもお見通しであろう九条社長は仕事中には絶対見せることのない、優しい笑みを私に向ける。


この笑顔に、心臓の動きが早くなるけど……私はこの人が嫌いだ。


嫌いでいないと、ダメなんだ。


きっと九条社長の顔がいけないんだ。こんなかっといい人に笑顔を向けられてとドキドキしない人はいないと思う。

「おいで、美月。なぐさめてあげる」


そう言って苗字ではなく名前を呼んで、腕を広げるこの人に、私は囚われる。


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