俺様社長の恋の罠

ただその手がいつもよりずっと優しくて、私はやっぱり戸惑ってしまう。


「……小学生の頃に、読んだことがあったと思います」


有名な作家の代表作だし、それを読んだことのない人はいないと思う。


確か孤独な少年と、友人が銀河鉄道の旅をする物語だ。


「知ってる?あの話は未完のまま、宮沢賢治は亡くなってしまったんだ。俺達が読んでるあの話は、本当の銀河鉄道の夜じゃない。俺、なんか子供の頃からこの本が好きで、色んな銀河鉄道の夜を読んだよ。子供の頃は夜空の星を見て銀河鉄道を探したりしてた。意外だろ?」


社長の綺麗な黒曜石のような瞳が、私の事を見上げている。


その目が、いつもの社長とは違う色を宿している気がして、見つめられると何となく落ち着かない。


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