天に見えるは、月


「……お待たせしました」

「これは必要ない」

モンドはすかさずスティックシュガーとミルクを香凛に返す。一瞬、モンドの指先が香凛の手のひらに触れ、なぜかドキリと胸が鳴った。

「あ……はい」

なにを動揺しているのだろう。

容姿端麗の人間に触れられると、人柄はどうであれ女は条件反射でドキリとしてしまうものなのだろうか。そう思うと香凛は少し悔しい気持ちになった。

しかし、こんな時間にサンドイッチとは。しかもこの体つきでたった一袋なんて、昼食か夕食だとしたらどう考えても量も栄養も足りない。


「……あの、もしかして今から昼食ですか?」

おずおずと香凛が聞くと、モンドはなぜか僅かに口角を上げた。

「食いたいのか?」

「だっ、誰が……!」

思わずぞんざいな物言いをしてしまい、冷や汗が出る。「わたしはまだお腹減ってませんので」と立て直してはみたものの、取り繕うことが出来たかはわからない。

モンドは取り立てて気にした素振りもなく、ハムとチーズが挟んであるいたってシンプルなサンドイッチに齧りついている。その様子を見て、香凛はほっとした。


「あの、それだけしか食べないならせめて野菜ジュースを飲むとか……」

ほっとした弾みで、思わずそんな言葉が口をついて出てしまった。

なに言っちゃってるのよ! と香凛は心の中で激しく自分を責め立てる。

以前、香凛が通っていた大学で、お金がなくて毎日サンドイッチや菓子パンだけという食生活を続けて倒れた人間がいた。それがずっと香凛の頭の中にあったせいだ。

モンドは食べる手を止め、香凛をじっと見つめている。香凛はその視線に耐えられず俯いた。


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