天に見えるは、月


ランチから部署に戻ると、モンドが自席に座っていた。

今日はそういう日程だっただろうか、とスケジュールを確認しようとすると、彼は「ミーティングルームに来い」と言って席を立った。

香凛はモンドの背中を追いかけるようにして、一緒に部署内のミーティングルームに入る。
アシスタントなのだから当たり前のことだろうけど、またふたりきりだ、と思う。この人とふたりきりになるのはどうも緊張してしまってだめだ。

モンドは手にしていた書類をテーブルに置き、椅子に腰かける。香凛はモンドの様子を窺いつつ、恐る恐るテーブルを挟んで対面に腰かけた。


「今の仕事がそろそろ一段落つく頃だと思うが」

部署内にいる時間が短いにもかかわらず、こちらの進捗状況をちゃんと把握しているのかと香凛は驚く。

「そう、ですね。今日でほぼ区切りがつけられると思います」

「これまでの仕事で、顧客の数、取り扱いの規模、アイテムなど少しは把握できていると思うが、どうだ」

言われて、固まった。まさかモンドはアシスタントにそれを把握させるためにわざと雑務をさせていたというのだろうか。たしかに説明されただけでは、頭になかなか刷り込まれない。繰り返し文字や金額を見ることで、自然と覚えるだろうと考えたとしたら……。

やはりこの人はとんでもない人なのかもしれない、と香凛は改めて思う。


「……はい、多少は」

「明日、午後一で大手百貨店の大納堂(だいなどう)にアポイントを取ってあるのはわかっているな?」

「はい」

そのスケジュールは数日前にモンドから聞かされていて、すでに予定表に組みこんである。

「それに橘も同行しろ」

「えっ」


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