天に見えるは、月
「さすが、中村さんですね! では詳しい話はあちらで……」
都村は百貨店のバックヤードのようなところへと手の先を向けている。
香凛も一緒についていこうとすると、モンドから“待った”がかかった。
「お前はリーフレットが切れていないかとか、俺が戻るまでディスプレイを掃除しながら隅々まで売り場をチェックしていろ」
モンドはそう言って、香凛に紙袋を渡す。
中を覗くと、メーカーのリーフレットと緑色のビニール袋が入っていた。そのビニール袋の中には、ハンディモップと埃の吸着性が良さそうな雑巾が入っている。
これは本当は、アシスタントが持ってくるべきものだったのだろう。
アシスタントがいなくなってから、モンドは掃除まで自らしていたのか。
香凛は少し減っていたリーフレットを補充し、ビニール袋からふわふわと柔らかな毛のついたモップを取り出して、ハタキの要領で商品についた埃を取った。
雑巾を取り出して商品の下の棚を拭こうとしたところで、後ろから「あの」と声がかかる。振り返ればさっきモンドを見てはにかんでいた鮫島が、トレーのようなものを持って立っていた。
「よかったらこれ、使って下さい。以前のアシスタントさんも中村さんも、いつもこれに商品をよけて棚を拭いてらっしゃったので」
「ありがとうございます。初めてでかってがよくわかっていないもんで、助かりました」
香凛はそれをありがたく受け取り、まず上段の商品を置いてあった順番どおりにトレーに移し始める。ふと横を見ると、鮫島もその作業を手伝ってくれていた。
「あ、すみません」
「いえ、いいんですよ」
手伝ってもらえるなら早く作業が終わりそうだ。香凛はそれもありがたく受け、作業を続ける。
そして、商品を全てトレーに移し終わったところで香凛はふと、鮫島と目が合った。