カタブツ上司に愛された結果報告書
「お持ちします」


スーツ姿の男性が迷うことなく向かった先は、おばあさんの元。

そしてナチュラルに荷物を持ち、おばあさんの身体を支えた。


「まぁ、申し訳ない……でも助かるわ、本当にありがとう」


一連のスムーズすぎる動作に、なにもできなかった私は唖然と立ち尽くしてしまう。

一歩踏み出した足が行き場を失っていく。

歩道橋の中腹で手を差し伸べてくれた男性に満面の笑みをみせるおばあさん。

その姿に、自分がますます情けなく思えてしまう。


男性のように迷うことなんてなかったのに。
先に気づいていたくせに、なにを躊躇してしまっていたのだろう。


恥ずかしくなりこれ以上ふたりの様子を見ていられなくなってしまった私は、すぐさま回れ右しこの場を立ち去ろうとしたそのとき。


「いいえ、先に気づいたのは彼女ですから」

抑揚のない声で淡々と述べられた言葉に、回れ右をしたまま動けなくなってしまう。


彼女ってもしかして……私?

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