カタブツ上司に愛された結果報告書
確信が持てず様子を窺っていると、運転席のドアが開く音が聞こえてきた。

「あっ……」


運転席から姿を見せたのは、やはり田中さんだった。
ただひとつだけ違うのは、スーツ姿ではなくラフな私服姿だってこと。


黒のシャツにジャケット。カーキ色のチノパンと会社で見る田中さんからは、想像もできない私服姿にしばし唖然と視線を奪われてしまった。


そんな私の元へ、ゆっくりと近づいてくる彼。

我に返ったのは田中さんが目の前まで来たときだった。


「こんにちは」

「あっ、こっ、こんにちは！　すみません、お待たせしてしまって」


慌てて頭を下げると、すぐに声が降りてきた。


「いいえ、約束のお時間通りでしたよ？　それより早く行きましょう。時間が勿体ないので」


頭を上げると、いつもの感情の読めない表情で私を見る田中さんと目が合う。

休日だろうと、デートだろうと彼はブレないようだ。


「はい」

田中さんの後を追って車まで向かい、促されるがまま助手席に乗り込んだ。

彼もまた素早く運転席に乗り込み、すぐに車を発進させた。
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