カタブツ上司に愛された結果報告書
私が入社してからは、そんな気配は全くなかった。

少なくともここ二年はいないにしても、私が田中さんと知り合う前のことは分からない。
やっぱりいたのかな? いや、普通いるよね。


田中さんは私より九歳も年上だし。それなりに恋愛経験を積んでいて当たり前だろうし。

ドキドキしながら思い出すように唸る灯里ちゃんの答えを待つ。


「うーん……どうだったかな? 彼女がいた気配ないと思うけど……」

「嘘、本当に?」


「うん、だってあのお兄ちゃんの秘書を務めているんだよ? 設立当初は余計に彼女を作る暇もなかったんじゃないかな?」

「……そっか」


張り詰めていた糸が一気に緩んだ。


じゃあここ数年はずっと仕事一筋だったってことなのかな? でもそれじゃどうして私と付き合ってくれたのかな?

仕事第一とは宣言されてしまったけれど、昔と比べて業績は伸びているし落ち着いたから?


そんな疑問が浮かぶ中、灯里ちゃんは「あっ、そういえば……」となにか思い出したように、声を上げた。


「でも好きな人はいたみたいだったよ」

「……好きな、人?」

トクンと心臓が脈打つ。
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