The price of life
「マリア選手!!」
その瞬間、反対側の鉄格子が開き、マリアの姿が現れる。マリアの腰にはダガーが収められている。マリアが会場へ出ると、鉄格子はすぐに閉まってしまう。
「マリア!!」
「カイン!!」
二人は走り寄り、抱き合った。
「会いたかったよ、マリア」
「私もよ、カイン」
水を差すように、アモスが割って入る。
「なんという感動の再会!!しかし、皆さん、想像できるでしょうか?今からこの二人が殺し合う姿を!!」
会場の歓声がさらに沸く。さらにアモスが続ける。
「改めてルールを説明します!ルールは至極簡単!どちらかが死ぬまで戦い続ける!!それだけです!戦い方は自由!!但し!!降参は一切認められません!!負けた方の遺体は猛獣の餌になってしまいまーす!!それでは、1回戦……始め!!」
会場中が狂気に包まれ始める。そして、二人の意思とは無関係に試合開始のゴングがアモスの手によって鳴らされてしまう。
「無理よ!カインを殺すだなんて!!」
「俺だって無理だ!!二人でここから逃げよう!!」
「でも、どうやって……」
辺りを見渡しても逃げられそうな場所はない。壁の上には万が一にも逃げられないように見張りの弓兵らしき者までいる。会場からは容赦ない野次や、その他様々な声が聞こえ始める。
「俺は男が勝つ方に1万ゴールド賭けるぜ!」
「おい!何やってんだ!!早く殺せぇー!!」
「そうだ!殺せ!殺せぇー!!」
逃げることもできない。かといって、マリアを殺すことなんてできるはずがない。カインは完全に動揺し、混乱していた。
「クソッ!!一体どうすれば……」
そんなカインの姿を見ていたマリアは、1つの決意を固めていた。
「カイン、私やっぱりあなたを殺すことなんてできない。だって、愛してるから」
「俺もだよ、マリア。だから、一緒に――」
「ゴメンね、カイン」
「何を言って――」
すると突然、マリアは腰のダガーを抜き、そのダガーで自らの首の動脈を深く切ってしまう。返り血がカインを赤く染める。突然の出来事にカインはただ呆然とするしかなかった。マリアの手から零れ落ちたダガーが地面へ落ち、乾いた音を立てる。辺りはマリアの血で赤く染まっていった――。
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