The price of life

第2話

　カインの目の前で静かに横たわるマリア。辺りはマリアの血で赤く染まっている。歓声はブーイングへと変わり、罵声が容赦なく二人に浴びせられる。
「あのアマ！自分で自分の首を斬りやがった！」
「なにつまんねぇことしてくれてんだこのアマ！！殺し合ってくれねぇとつまんねぇだろうが！！」
「そうだそうだ！！ふざけんな！！」
我に返ったカインはマリアを抱き寄せる。マリアの命の灯火は今にも消えそうになっていた。
「マリア！しっかりしろ！！マリア！あぁ、なんてことを……」
「カイン……ゴメン、ね……もう、お弁当……作って、あげられない、ね……」
苦しみと痛みに耐えながらも必死に喋ろうとするマリア。カインは動揺を隠しきれない。
「もういい！もう喋るな！！誰か、誰か！マリアを！彼女を救ってくれ！！頼む！！」
しかし、カインの声は罵声にかき消される。それでもカインは叫び続けた。マリアを、愛する人を救いたい一心で。
そこに下品な声が闘技場内に響き渡る。実況のアモスの声だ。
「あぁーっとぉ！！マリア選手、自分で自分の首を斬ってしまったぁ！！もはや虫の息だぁー！！カイン選手、これは絶好のチャンス！今だ！！とどめをさせぇー！！殺せぇー！！」
それに呼応するかのように、観客席からは一斉に殺せコールがわき起こる。狂気に包まれる会場内。そんな声にカインは怒りを露わにした。
「黙れ！！そんなこと……そんなことできるわけないだろ！！」
「カイン……」
マリアが最後の力を振り絞り、カインに語りかける。
「マリア！今……今助けてやるからな！二人で一緒に帰ろう！また一緒に暮らそう！マリア！！」
右手でマリアの左手を強く握りしめるカイン。
「カイン、私……幸せ、だった……生まれ変わっても……また……一緒、に……」
「マリア？おい、マリア！しっかりしろ！！マリア！！一緒に帰るんだ！死ぬな！俺を、俺を１人にしないでくれ！マリア！マリアァァァー！！」
マリアの手がカインの手から零れ落ちる。マリアはカインに抱かれながら、静かに永遠の眠りについた。それを見ていたアモスが再び口を開く。