The price of life
「ここで完全にマリア選手がダウン!しかし、ここからでは完全に死んだかどうか分からない!!そこで、衛生兵に確認してもらいましょう!衛生兵!!」
アモスの呼びかけに呼応し、右側の鉄格子が開き、そこから1人の衛生兵らしき人物がカイン達の方に近づいてくる。衛生兵はカイン達の傍までくると、マリアの手首の脈で生死を確認し始めた。
「ただ今、マリア選手の死亡を確認いたしました!!」
衛生兵が大きな声でアモスに報告した。それを聞いたアモスは再び高揚した口調で実況を再開する。
「皆さん!お聞きになられたましたでしょうか!!今、マリア選手の死亡を確認いたしました!よって、1回戦の勝者は……カイン選手です!!」
観客席は歓喜に包まれる。歓声に震える会場。ただ1人、カインだけが深い悲しみと、喪失感に堕ちていた。
「う、嘘だ……マリアが死んだなんて……そんなの、そんなの嘘だあぁぁぁー!!」
思わず泣き崩れてしまうカイン。そんなことはお構いなしに続けるアモス。
「それでは、皆さんお待ちかねのショータイムのお時間です!!カイン選手、死にたくなければ速やかにご退場お願いいたします!」
右側の鉄格子の中から猛獣達の唸り声が聞こえ始める。
「ふざけるな!!マリアの身体には指一本触れさせない!!」
立ち上がり、剣を構え、奮起するカイン。
「おやおや、これは困りましたねぇ……」
呆れ顔で困り果てるアモス。
「スリープ!!」
突如、どこからか女性の声が会場に響き渡ると同時に、突然急激な眠気に襲われるカイン。
「こ、こんな、時に……なん、で……」
そのまま意識が遠のいてしまうカイン。観客席からの狂ったような歓声だけが意識を失う瞬間まで微かに聞こえていた。
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