部長っ!話を聞いてください!

部長は嫌そうに“ほんとだよな”と言った。思わず口元が引きつってしまった。

なんか……いつもと違う。部長が冷たい!


「俺、301」

「301!? 角部屋って部屋数多いですよね。さすが部長」


私たちの住んでいるマンションは、角部屋が他の部屋と間取りが違うのだ。もちろん、そのぶん家賃も高い。


「でも301ってことは、斜め上ですね!」


恋焦がれている相手がそんな近くで生活していたことに、なぜもっと早く気付けなかったのだろうか。

この半年間、とても惜しいことをしていたような気持ちになってしまう。

ふっと、ある疑問が頭に浮かび、私は部長を見上げた。目が合った。


「……そう言えば、部長驚いてませんよね。もしかして、私が同じマンションに住んでること知ってたんですか?」

「あぁ、知ってた」

「なんで言ってくれなかったんですかっ!」


文句がちに言うと、部長の瞳が困ったように揺れた。


「言ったら……いや、いい。なんでもない」


そして視線をそらされてしまった。おまけに歩くスピードも上げる。


「ぶっ、部長っ! 言ったら何ですかっ! 教えてくださいっ! 気になりますっ!」



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