部長っ!話を聞いてください!
そんな部長を小走りで追いかけ、私は懲りずに横へと並ぶ。
こちらに目を向けた部長に対し、言葉の続きが気になっていることを眉根を寄せて訴えてみたけれど、吹き出されただけだった。
そのまま部長は前を向いてしまった。私は聞き出すことを諦め、俯き……こっそり笑みを浮かべた。
足元がふわふわして、なんだか夢をみているような気分だ。
大好きで遠い存在だった神崎部長が、自分と同じマンションに住んでいた。
部長は雲の上の存在だったのに、住んでいる部屋の間取りを思い浮かべることができただけで、生活のイメージを思い浮かべることもでき……ただそれだけで、距離がぐっと近づいたように思えた。
部長が隣を歩いている。
手を伸ばせば触れられる距離にいる。
こんなにも、部長を身近に感じる。
憂鬱だった朝が嘘のように、私の心は舞い上がっている。
空を見上げると綺麗な青が広がっていて、部長の誕生日が、素敵な一日になりそうな気がした。
私はハッとし、視線を落とした。
持っているショッピングバックに目を留め三秒後、勢いよく顔を上げて、辺りをキョロキョロ見回した。
会社に着いてから手渡そう思っていた……けど、今、二人っきりだ。