黄金の覇王と奪われし花嫁
上機嫌なバラクとは対照的にユアンの表情は晴れない。

風の女神の生まれ変わりなんて、自分はいつそんな立派な存在になったのだろうか。

本当の私は、何も持たない、何も出来ない娘なのに・・・。

「どうした?」

バラクが心配そうにユアンの顔を覗き込む。

「いえ、何も」

ユアンは首を振った。

「俺はな、お前の怒った顔を見ると家に戻ってきたと実感するんだ。
だから、似合わないしおらしい顔などやめろ」

バラクは楽しそうに笑いながら、ユアンの頬をつまんだ。

その笑顔はユアンの心を締め付け、苦しくさせる。


「もうっ。いつまでもふざけてないで、早く寝て身体を休ませなさいっ」

ユアンはバラクの望み通りバラクを怒鳴りつけ、室から追い出した。




その夜。ユアンは浅い眠りを繰り返し、何度も目を覚ました。


自分はこのまま、この場所にいていいのだろうか。

バラクは本気で王になろうとしている。
そして、それを叶えるだけの力も蓄えている。

そのバラクの妻に自分はふさわしいのだろうか。
バラクが一人しか妻を持つ気がないのであれば、その妻たる女の責任は重い。

そんな才覚が自分にあるのだろうか。
もっとふさわしい女がいるのでは?


いくら考えても結論など出やしない。

ころんと寝返りをうち、もう一度眠りにつこうとするが目はすっかり冴えてしまっていた。

ユアンは寝台の横にかけてある毛皮の外套をはおり、そっとオルタを抜け出した。
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