黄金の覇王と奪われし花嫁
アリンナの夜は驚くほどに冷えこむ。

冬は極寒、夏は灼熱。 さらに昼夜の寒暖差が非常に大きく、厳しい気候だ。

身を切るような冷たい風にユアンは首をすくめ、毛皮を口元まで引き寄せた。

どこまでも続く夜の闇の中に、大きな月だけが静かに輝いていた。


「私のさだめか・・・」

ユアンは小さく呟き、頭上の月を見上げた。
どんな時もユアンを守ってくれた父も兄ももう居ない。自分の生き方は自分で決めなければならないのだ。

ガサっと草木が揺れる音がして、ユアンは咄嗟に大きな岩陰に身を隠した。
女とはいえ、ユアンも数々の戦を生き延びてきたのだ。
身を守るための最低限の術は身に付いている。


「〜〜〜」
「わかっている」


少し距離はあるが、静かな夜の風に乗ってユアンの耳にはっきりとその声は届いた。

ナジムと・・・バラクの声だ。

ひとまず敵の襲来でなかったことにユアンは安堵した。そして、そっと二人の様子をうかがった。

隣の室で寝ていたはずのバラクはいつの間に外に出たのだろうか。


ユアンが隠れている岩より少し先にあるもっと巨大な岩石の上にバラクが座り、ナジムはその側に立っていた。
二人ともユアンに背を向けていて、こちらには気づいていない。

ユアンが顔を出すタイミングを見計らっている間にも、二人の会話は続いていた。
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