黄金の覇王と奪われし花嫁
「明日、バラクは貴女を俺に下賜すると皆に正式に発表します。だから、貴女がバラクの妻なのは今夜までです。 何か話したいことがあれば最後のチャンスですよ」

ナジムはすっとユアンに近づき、小声で囁く。なんだか含みを持たせるような言い方だ。

「話したいことなど何もないわ。明日からよろしくね、ご主人様」

ユアンは硬い表情でそっけなく告げると、足早に室を出て行く。

が、バラクの名を聞いて一瞬動揺したのをナジムは見逃さなかった。

「素直じゃないなぁ。 バラクの女の趣味は俺にはわからん」

ナジムはクスクスと笑って言ったが、ユアンの耳には届かなかった。


「えっ!? トゥイもナジムのオルタにうつるの?」

ユアンの室で、ユアンとトゥイはスパイスたっぷりの甘いお茶で身体を温めていた。だんだんと冬が近づいていて、寒さが身にしみるようになってきた。

トゥイは砂糖漬けの木の実を頬張りながら、当然ですと答えた。

「私の主はユアン様ですもの。ユアン様がいないのなら、バラク様の元にいても何の意味もないですから」

「嬉しいけど・・」

族長の妻ならともかく、そうでなくなるのだから世話係なんて許されるのだろうか。ナジムに嫌味を言われそうだ。

「ナジム様には許可をもらいましたよ」

ユアンの心配を見透かしたように、トゥイは微笑んだ。

「いつの間に・・・」

トゥイの仕事の早さにユアンは驚く。
自分などよりトゥイの方が王の妃の器なのでは・・・と真剣に考えてしまった。

カタンと誰かが室に近づいてくる物音がして、ユアンとトゥイは会話を止めた。

「どなた?」

トゥイが呼びかける。

「俺だ」

低い声が届くと同時に、長布の隙間からバラクが顔を覗かせた。

「あら。それではユアン様、私はこれで。 お休みなさいませ」

バラクの視線で彼の要望を察したトゥイがユアンに礼をして席を外す。
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