小悪魔な彼にこっそり狙われています
「えー!?それって本当!?」
来栖くんと距離を置き、一週間近くが経とうとしたある日の昼休み。
会社近くのコンビニで昼食を選んでいた最中、突然聞こえた女性たちの大きな声にハッと我にかえる。
「ちょっと、声大きいって」
「ごめん〜、びっくりしちゃって」
見ればその声は、同じく昼食を買いに来たらしい女性ふたりのもので、見覚えのある顔からうちの会社の社員であることに気づいた。
確か彼女たちは営業部だったっけ。うちの課の人間だったら、コンビニで大きな声を出すんじゃない、と今すぐ叱るのに。
気を取り直し、おにぎりを買おうかと手を伸ばす。
「けどそれ本当?来栖さんが転勤って」
ところが、突然の『来栖さん』の名前に手は止まり、つい耳を傾ける。
「本当らしいよ。社長と来栖さんが話してたって、たまたま聞いた社員がいるんだって」
「えー、密かに狙ってたのに〜」
それは転勤についての話らしい。社長も本人も公言はしていないのだろうけれど、話は噂となりもうすっかり回ってしまっているようだ。
彼女たちは残念そうに嘆くと、サンドイッチを手にとる。